小・中学校学習指導要領
(平成29年告示)解説
(小)p.64,65
(中)p.62,63

主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること

内容項目 小学校「生命の尊さ」
内容項目 中学校「生命の尊さ」

  

発達段階に応じた指導

小学校低学年 生きることのすばらしさを知り,生命を大切にすること。
小学校中学年 生命の尊さを知り,生命あるものを大切にすること。
小学校高学年 生命が多くの生命のつながりの中にあるかけがえのないものであることを理解し,生命を尊重すること。
中学校 生命の尊さについて,その連続性や有限性なども含めて理解し,かけがえのない生命を尊重すること。

小学校・中学校学習指導要領解説 (2)指導の要点の一部抜粋

 
指導に当たって
小学校低学年
C-(17)
 この段階においては,生命の尊さを知的に理解するというより,日々の生活経験の中で生きていることのすばらしさを感じ取ることが中心になる。例えば,「体にはぬくもりがあり,心臓の鼓動が規則的に続いている」「夜はぐっすり眠り,朝は元気に起きられる」「おいしく朝食が食べられる」「学校に来てみんなと楽しく学習や生活ができる」などが考えられる。 指導に当たっては,これらの当たり前のことで見過ごしがちな「生きている証」を実感させたい。また,自分の誕生を心待ちにしていた家族の思いや,自分の生命に対して愛情をもって育んできた家族の思いに気付くなど,自分の生命そのもののかけがえのなさに気付けるようにすることが大切である。そのことを喜び,すばらしいことと感じることによって,生命の大切さを自覚できるようにすることが求められる。
小学校中学年
C-(18)
 生命は唯一無二であることや,自分一人のものではなく多くの人々の支えによって守り,育まれている尊いものであることについて考えたり,与えられた生命を一生懸命に生きることのすばらしさについて考えたりすることが大切である。あわせて,自分と同様に生命あるもの全てを尊いものとして大切にしようとする心情や態度を育てることが求められる。
小学校高学年
C-(19)
 家族や仲間とのつながりの中で共に生きることのすばらしさ,生命の誕生から死に至るまでの過程,人間の誕生の喜びや死の重さ,限りある生命を懸命に生きることの尊さ,生きることの意義を追い求める高尚さ,生命を救い守り抜こうとする人間の姿の尊さなど,様々な側面から生命のかけがえのなさを自覚し生命を尊重する心情や態度を育むことができるようにすることが求められる。
中学校
C-(19)
 まず,人間の生命のみならず身近な動植物をはじめ生きとし生けるものの生命の尊さに気付かせ,生命あるものは互いに支え合って生き,生かされていることに感謝の念をもつよう指導することが重要な課題となる。例えば,それぞれの生命体が唯一無二の存在であること,しかもそれらは全て生きているということにおいて共通であるということ,自分が今ここにいることの不思議(偶然性),生命にいつか終わりがあること,その消滅は不可逆的で取り返しがつかないこと(有限性),生命はずっとつながっているとともに関わり合っていること(連続性),生命体の組織や生命維持の仕組みの不思議などを手掛かりに改めて考えさせることができる。そうした学習を通して,自らの生命の大切さを深く自覚させるとともに,他の生命を尊重する態度を身に付けさせることが大切である。
 さらに,理科や保健体育,技術・家庭などの他教科等での学習も踏まえつつ,生命倫理に関わる現代的な課題を取り上げ,話し合い,多様な考えを交流することにより,生命とは何か,その尊さを守るためにはどのように考えていったらよいかなど,生命尊重への学びをより深めることもできる。
 この内容項目は,道徳科の内容全体に関わる項目であり,他の内容項目の指導においても,生命尊重に関連する事項を扱う場合には,この内容項目との関連を意識した指導に留意したい。また,教育活動全体の取組を通じて,自己肯定感や自己有用感の高まりから,生徒一人一人の自尊感情を高めることにもつながるような指導の工夫も大切である。